ヒットの確率だけわかっていても思い通りに進むとは限らない

プロ野球のゲームは戦略を立てても効果を発揮しないことがある

現場では、このような戦略的計算がなされつつ、配球の比率が決あられているに違いないと思うのだが、実際はどうなのだろうか。これ野球のヒットの確率だけ物事がわかっていれば私もすぐにプロ野球で通用しそうだが、いかんせん私の場合は直球を投げても変化球を投げてもヒットを打たれてしまうので、せっかくの戦略的思考も効果を発揮しないのである。

戦略的にリスクを作り出す上で注意しなければならないのは、最適な確率比を毎回独立に維持しなければならないという点である。ジャンケンの例に戻れば、最適な戦略では右で計算した1対1対10の確率比を毎回維持することが大事であって、12回ごとに1対1対10の比で「グー」と「チョキ」と「パー」をだすのが目標ではない。いくら確率が小さいとはいえ、結果的には「グー」が連続するかもしれないが、それは、さいころを振ったときに、同じ目が連続して出ることがあるのと同じ理屈である。過去11回の対戦で一度も「グー」を出していないとき、1対1対10の比にこだわって「グー」を出すのでは、相手に読まれやすくなるだけである。

ところが、過去から決別して毎回独立に確率を維持するのは、やってみると結構むずかしい。最適な戦略を正確に実行しようと思えば、12分の1の確率を客観的に測れる物を用意することである。たとえば、さいころ一つと百円硬貨を一つ用意しておく。毎回のジャンケンの前に、さいころと百円玉を投げ、百円玉が表でさいころの出目が1ならば「グー」、百円玉が裏でさいころの出目がーならば「チョキ」、それ以外ならば「パー」を出すと決めておくと、ちょうど1対1対10の確率の比が客観的に維持できる。


社会経済現象を理解するためには、各個人が直面するインセンティブの構造を考えなければ、その本質的な理解は得られないといっても過言ではない。このように書くとたいそう大げさに聞こえるのだが、実はインセンティブの構造を考えるということは、われわれが日常的に経験かつ実行しているものだ。むしろ、たいていの人はその構造を明らかにすることを楽しみにしているといってもよい。

推理小説では、犯罪の捜査はまず犯人の動機を明らかにすることからはじめるのが定石になっている。誰か人が殺されたとすれば、殺される理由があるはずで、その理由から割り出して怪しい人を探すわけだ。「インセンティブ」という言葉を使って言い換えれば、犯人には殺人をするインセンティブがあったはずだから、そのようなインセンティブのある人は誰だったのかをめぐって捜査がすすむということになる。

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